世界で一番愛おしい食堂 ミラノ 「 Latteria ラテリア」よ永遠に

ここで食べることが、ミラノへ来る楽しみだった

この日がやって来ることを、この4、5年、心で恐れていましたが、11/29、突然の訃報のように耳に入ってきました。

「ラテリア・サンマルコ 、歴史的レストランがクリスマスに別れを告げる、創業して58年の引退」

もう、心にポッカリ穴が空いたように茫然となりました。

「ついに、来てしまったのね…」

イタリアでは、数紙の新聞、多数のネットニュースが、このニュースを報じるという事態になったようですが、

日本にいるラテリアファンもかなりのショックだったと思います。

引用:la Repubblica 記事

個人的には、コロナ禍より、すでに4年行けていないままでの別れにやるせない思いと、

85歳になる巨匠アルトゥーロシェフと、77歳のマダムマリアに、心からお疲れ様でした、という思いです。

出会ってから19年

ラテリアに初めて伺ったのは、2004年の9月、ミラノファッションウィークでミラノに来ていた時、雑誌「ヴァンテーヌ」のイタリア特集に小さい小窓のようなスペースに、このお店の紹介がありました。

とりあえず、いくつか行ってみようと、会社から歩いていける場所にあったこのラテリアに、同僚スタッフがランチで伺ったのが始まり。

その時、電話が鳴り、「ランチ食べた?まだだったら今すぐ来て!」とお声がかかりタクシーで駆けつけました。

先に始めていた同僚が、「ここかなりヤバいよ!めちゃくちゃ美味しい!」と。

その時いただいたのが、

・カラスミとトマト、ソンチーノのサラダ

ソンチーノという丸い葉っぱの野菜。日本では、マーシュ、コーンサラダといった名前で売っているどうですが、ミニほうれん草的な感じでクセがなく、イタリアではレタスやキャベツのように一般的に食べられている菜っ葉。

ミニトマトサイズだけど、1粒1粒がフルーツトマトのように甘くて濃い味の半割りにされたミニトマト。

これに、これでもかとボッタルガ・ディ・ムギーネ(ボラの卵)をたっぷり削り覆った、なんとも贅沢なサラダ!最初見た時、目が釘付けになりましたw

レモンをたっぷり絞って、エクストラヴァージンオリーブオイルとヴィネガーをサッとかけて混ぜ合わせていただきます。

カラスミ好きには神のような美味しさで、本当に贅沢な一品。これで、当時22ユーロで、この店の中で一番高額だったような記憶。

それ以来、このサラダは私のレギュラーメニューになりました。

・レモンと青唐辛子のペペロンチーノ

今や、この店の代名詞のような人気メニューの、通称「レモンパスタ」

特に日本人客の間で人気のメニューで、マダムのマリアが、なんで日本人はこればっかり頼むの?と不思議がっていました。

レシピは、前日にレモンの皮と青唐辛子のみじん切りを塩漬けにして当日オリーブオイル、レモン果汁、松の実を混ぜ合わせて、アルデンテに茹でた特注のBarillaの1.6mmと和えます。仕上げにイタリアンパセリとオリーブオイルをふりかけたシンプルパスタ。

日本では食べたことがない衝撃の味でした。酸っぱい、辛い、香ばしい、サッパリ、とにかくクセになる味。絶妙なアルデンテ加減も私たち日本人の味覚にマッチしたんだと思います。初日に食べて以来、メニューにあれば、毎回のようにオーダーしました。

メニューにない時は、次回来る日をお伝えしてリクエストして作ってもらったことも何度もあります。笑

今では、レギュラーメニューになるほど頻繁にメニューに登場していましたね。

レシピを教えてくれたので、お家でも何度か作っているのですが、やっぱりどこか違う仕上がりなんですよね。。

必ず再現100%を目指したいと思っています。

・野菜のクルダイオーラ

マダムマリアにオススメされて頼んだ一品だったのですが、一口食べたあの感動は今でも憶えています。

4月〜9月の間のシーズン料理で、作り方はアルトゥーロシェフのオリジナル料理ですね。

野菜たっぷりの不思議な食感・温度(ぬるい) で、本当に説明し難い料理ですが、とにかく絶品です。

スプーンで気軽に食べやすく、野菜の旨みを150%味わえる最高に美味しい野菜料理です。

ラテリアのメニューで一番のお気に入りで、あると絶対オーダーした料理ですね。

 

次の日の夜も伺いました。そして、3日後の夜も。

そして、毎回ミラノに行くたびに、このラテリアに行くことがもう一つの目的になってしまった。

魅了された至極の一皿たち

「何を食べても美味しい」のがラテリアですが、その中でも至極の品々をMY選抜でご紹介します。

・ブロッコリーのクレーマ

ブロッコリーに松の実を入れてクレーマというラテリア風スープ?おかゆ?

一口食べるとブロッコリーそのものの甘み旨みがたっぷり味わえる、風邪も一発で治りそうな一皿。

疲れた体に染み渡る優しい美味しさ。こんな素朴で素材そのものを最大限に美味しく味わえるのです。

・絶品の野菜たち

ラテリアは、とにかく野菜料理が本当に美味いのです。

チコリのアンチョビソース 

季節が来ると必ずオーダーします。苦味とアンチョビの塩加減が抜群!お肉の付け合わせとしても素晴らしい。

プンタレッレのアンチョビソースと、ピーマンマリネ

白金のモレスクで、初めていただいたプンタレッレという野菜。すごく印象があって、また食べたいなと思っていて、次に食べれたのがラテリア。アンチョビソースとの黄金のコンビネーションは、ラテリアの看板商品です。

ピーマンのマリネも大胆で潔い、そして美味い!

キャロット エ セダノ(根セロリ)

このサラダが好きすぎます。人参の甘みと根セロリの食感が素晴らしい。

カルボナーラ

パスタの下に卵の黄身が隠れていて、混ぜ合わせていただきます。豚の塩漬けグアンチャーレの塩気とのバランスが極上です。

名物!目玉焼きのボッタルガかけ

熱々の銀のフライパンに、バターたっぷりイタリアの絶品卵の目玉焼きにこれでもかのカラスミをかけたもの。この店の定番としていつも食べることが出来ました。ぐちゃぐちゃに混ぜて、お肉に乗っけて食べたり、パンに挟んで食べたり。

ハンバーグ

「ポルペットーネ、ポルぺッティーネ」というメニュー名だったと思います。

サイズが色々あって、写真はポルペットーネ。粗挽きの子牛の挽肉の肉肉しさがダイレクトに味わえる素朴なハンバーグでした。

レバーのソテー(セルビアの葉っぱとバターのソース)

子牛のレバーがこんなに美味しいのか、と本当に驚いた一皿です。

全く食感が違う。食べたことがないレバーでしたね。本当に新鮮なレバーでしかやらないそうなんです。

今でも本当に食べたくなるレバー料理です。

子牛のソテー

柔らかな子牛をバターでソテーしたシンプルな一皿。「ご飯の上にのっけて食べたいね」ってよく言ってました。

世界一美味しいチーズケーキ

ここのチーズケーキを食べた時の衝撃! 軽さが驚異的。コクはしっかりあるのに軽い。くどくないです。

ふわっとなめらかで酸味は抑えてあります。

最初、ブルーベリーがのっていて、時にはラズベリーや、ミックスベリーとその日の仕入れで変わりました。

マリアと彼女の友人の手作りなんだそうです。

ただ、なかなかチーズケーキがある日がないので、事前にホールで予約をするようになりました。笑

1人1カットずつ食べて、余った分は、テイクアウトしていました。たまにチラチラこちらを見ていたお客さんに分けてあげたり。

本当に美味しくて、まだこれを超えるチーズケーキには会っていません。

チーズケーキ ミックスベリーソース
初めて食べた時の、チーズケーキ ブルーベリーソース

バニラジェラートと苺ソース

これぞラテリア!なデザート。バニラジェラートに季節ごとにソースが変わります。

苺ソースは、苺しか入っていない濃くて口の中が苺で溢れるソースです。感動しかない。

時にはあったかい林檎ソースも。アップルパイのパイ抜きみたいなイメージ。

ワインは、赤か白

ワインは、赤か白の2択。デカンタで、1L, 500ml,  250ml とサイズで選びます。

樽からサッとマルコが入れてくれます。

特に、赤の美味しさは抜群。葡萄ジュースのようにゴクゴク飲めます。大好きな赤ワインでした。

お疲れ様でした。マエストロ・アルトゥーロ & マリア

58年もの間、客足が絶えることなく、ミラノの人たちだけでなく世界中のこの店に魅了された人々に愛され続けてきたこの店を切り盛りするのは、マエストロ・アルトゥーロシェフとマダムのマリア、息子のマルコ。

 

基本、予約は受けないから、とりあえず行ってみる。並んでなかったらラッキー、でも基本並んでます。並んでいたら必ず入れるので、断られないだけ良かったです。笑

また当時はカードも使えないから、行く時はユーロをある程度もていかないといけない。今はカードが使えるようになりました。

土日休み、平日のみの営業だから、仕事終わりに駆け込む感じでした。

昼夜関係なく、開店と同時に席が埋まるので、毎朝の仕込みも大量です。

仕込みはマリアが主導で、ガッツリ行っているとのことでした。

マリアは、今、77歳ですが、朝からずっと立って、仕込み→接客・配膳→仕込み→接客と、58年間大忙しの人生。本当に働き者のお母さんです。そして、圧倒的に可愛い!大好きです。

アルトゥーロシェフは、今年85歳。あの優しい柔らかなお顔で、あれだけのお料理を生み出す神の手を持った天才シェフ。素材の目利き力と味覚の鋭さは、天性の才能だと思うほどの凄さですね。そして、可愛すぎる。

息子のマルコは、ドリンクを用意したりお会計の担当です。待っていると、たまにワインをくれました。

マリアの弟子でホールを一緒に切り盛りするジミー。あの店で唯一英語がわかるスタッフです。

お昼に1人で行くと、必ず相席になるのですが、レストランの目の前がイタリアの有名な新聞社「La Gazzeta dello Sport」、「Corriere della Sera」なんですが、そのスタッフの方とよく相席になり、Ciao! と互いに声かけるほど顔見知りになったりしました。

ここのレストランで食べることが幸せでした。

街の実力者であろうと、有名人であろうと、昔からのお馴染みさんだろうと関係なく、来店順に案内されるフェアな姿勢。

誰もが敬意を持って、このラテリアに食事に行っていたと思います。

2023年12月22日をもって閉店する。 この決断は容易ではなかったはず。開ければ多くのお客様が来てくれるお店だったのだから。

一度食べただけで虜になる。その味を引き継げるものがいなかったのは、本当に残念ですが、長い間、多くのファンのために、多忙な毎日を頑張っていただけたことに心より感謝で一杯です。

今まで、数多く訪れ、多大な影響を受けた料理人たちが、ラテリアが放つ、「本当の美味しさ」の意味を少しでも継承し、のびのびとチャレンジされることを切に願います。

 

これから2度と、あの味を食べれないのは、本当に本当に残念なんですが、アルトゥーロシェフとマリアには、ゆっくり休んで、自分たちの時間を楽しんでほしいなと思います。

毎回毎回、感動と優しさをありがとうござました。

どうか、ずっとお元気でいてくださいね。

 

こんなに愛おしく思うお店はないですね。出会えたことに、感謝で一杯です。

最高に美味しかったです。 

心より、ご馳走様でした。

Dal profondo del mio cuore, grazie per il cibo.

 

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

La Latteria 店舗情報

La Latteria

住所 :  Via Saint. Marco, 24, 20121 Milano, ITALY  

2023年12月22日 Closed

サンマルコ通り24番地
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