3つ目の人生レストランは、最高の和食
こんにちは。
運命の出会い〜 3つの人生レストラン をご紹介しています!
1. 中目黒 Bacione (バッチョーネ) – イタリア料理 〜 近くにあったら、週2,3で通う
2. ミラノ La Latteria (ラテリア) – イタリア料理 〜 国宝級食堂
3. 原宿 重よし – 日本料理 〜 人生における至福の時間
3つ目は、原宿で50年、最高の和食をおもてなしされます、重よし さんについて。
日本料理の姿勢と真の美味しさを教えていただいたお店です。
原宿「 重よし 」日本料理
重よしさんには、大切な恩人の方に、「 いつかここにお連れしたいと思っていました。」とおっしゃっていただき、26年前に初めて連れて来ていただきました。
恩人に紹介され、少し緊張しながら、カウンター越しの店主・佐藤憲三さんにご挨拶しました。その時はまだ、このお店がとんでもないお店で、佐藤さんがまたとんでもなく凄い方とは知らなかったんですけどね。
カウンター席にほとんどのお客様が座られ、カウンターが一杯の時、またはご希望の方がテーブルもしくは座敷に通されます。
50年間、このお店のお料理を出してきたカウンターの美しさにまず圧倒されます!また、目の前でお料理をされるので、調理場も、しっかり磨かれとても綺麗にされています。
店内の数カ所に生花が花器に控えめな佇まいで挿されているのが目に入るのですが、これがセンスが良くて、心がすっと落ち着くんです。行く度の楽しみの1つでもあります。
人生の至福の時間
時にそのカウンター席には、誰もが知る著名人の方々、文化界、政財界の方が普通に食事をしている光景をお見受けすることもあります。皆さん、お知り合いなの?!と思うほど、挨拶し合ったり、互いの献立をチェックしながら会話をする光景があり、不思議な気持ちでその空間にいさせていただくこともあります。
しばらくは、場違いなところにいる感覚で緊張感があるのですが、それを取り除くかのように、座るや否や、目の前の美しいカウンターに一皿目が出て参ります。隣の恩人の所作を真似るように一皿目を受け取り、はじめの一口目で、「うわっ、何だこれ?! 美味しい…」と最初から五感が目を覚ます感動に包まれます。 一皿終わって次の皿という感じで、淡々と黙々と12〜13品が振る舞われます。至福タイムの始まりです。
料理の説明は、毎回はないので、聞きたいことがあれば聞けば丁寧に教えてくれます。慣れてくると、ご主人と、産地や今日の状態などを会話するのが楽しいです。ご主人は日本料理について本当に博識で、そして神の舌の持ち主ですので、素材の旬や美味しい産地、どういう手間をかけるかなど、色々と教わることが出来て本当に勉強になります。ご主人も嬉しそうに教えてくれます。
重よしのご主人、佐藤憲三さんの著書「重よしの呼吸 料理読本」大和書房 にて、”重よしの料理とは…”という節の中で、ご主人がこのようにお答えになっています。
” 一つ目は、体にやさしいと同時に食材に対してもやさしく接したい。
二つ目は、食べることによって豊かさが味わえる。
三つ目は、ほんの少し懐かしい。
これが、重よしのめざす料理だと思っています。お帰りになるとき、ふと垣間見るお客様の笑顔が私の支えかもしれません。”(抜粋)
奇をてらわない穏やかな思いのように感じますが、出される料理はこの3つの思いを体現しながら、さらにこの上ない美味しさで提供されますので、本当にカッコイイなと思います。
そのお客様のための献立
予約されたお客様お一人お一人を考えながら、最初から最後まで、楽しみながら、嬉しくなり、心が弾み、穏やかになり、笑顔になる、バランスを考えた献立が繰り広げられます。最後まで何が出てくるか分からないのが大人っぽいしワクワクしますね。また、一つ一つの器もとても素晴らしいので、それも楽しめます。
・3月のある日の献立
自家製からすみ – 塩加減といいほろっとした食感といい素晴らしすぎるからすみ
ホワイトアスパラとナッツたれ – 柔らかめ食感の甘みのあるアスパラに甘みのないピーナッツを丁寧にのばしたそのままでもイケるソース
グリンピースのすり流し – 重よしさんのすり流しの凄さはもう言葉がありません。グリンピースってこんなに美味しいの?!と思わされます。
牡蠣 – 重よしさんに行けば、極上の的矢の牡蠣が一番良い状態で食べれます。サクッとした食感!!
焼き物 – あまごのつけ焼き 香りと苦味が程よい。
六寸 – 白魚とゆかりが合う!鮒すしはここでしか食べません。鮭の鼻先軟骨の氷頭膾も食感とピリッとした甘酢が美味しい。毎回、旬素材と料理の組み合わせが新鮮で楽しみの皿です。
沢煮椀 – ご主人の右腕であり、椀の名人である大野さんが、目の前でサッと作ってくれます。とにかくお出汁も野菜も美味しいのです。
今日のお刺身 – ホシガレイ 最高級の鰈ですね。こちらで初めていただきました。最上級の白身の淡白さと甘みが出す旨みがたまりません。
焼き物 – 白河の炭火焼き 甘鯛の中でも希少で幻の魚と言われています。良い香りで身も引き締まって甘みが広がります。
芙蓉蟹 – 毛蟹と卵で贅沢な食べ方。あんも程よい酸味でスッキリとした後口になります。
芋コロッケ – 芋の味がストレートでほっくり、衣がまたなんとも良い香り😊
筍 – この季節になると、筍を食べに重よしさんに行きたくなります。丹波産が基本で、食べ方はいつも通り、炊いて、削りたて鰹節をまぶし、木の芽を添えます。柔らかくて香り高く、初めてこちらでいただいた時に、筍って本当に美味しいだなぁと思いました。
ご飯 – 鉄火丼 この日は鮪が美味しいのが入っているから鉄火丼はどう?とお薦めされ念願の鉄火丼を。鮪の味やわさび醤油たれの完璧さは言うまでもなく、格別に美味い海苔と一粒一粒まで美味しい魚沼の厳選白米と合わさり極上の鉄火丼でした。
汁 – しじみのお味噌汁 八丁味噌としじみの苦味のコンビネーションは深い風味とコクを生み出して、鉄火丼と合います。このしじみのお味噌汁でおじやもたまに作っていただきますが、またこれがめちゃくちゃ美味いんです。
デザート – 豆かんと柏餅 最後に2品出てまいりますが、重よしさんはデザートもかなり美味しいので、楽しみなんですよね。毎回、お腹いっぱいの状態でデザートになりますが、甘みが抑えてあり、サクッと食べて、最後に濃いめの美味しい煎茶で〆ます。
食べ終わった後は幸福感に満ちていて、お家に帰っても胃もたれなく軽やかに過ごせる。栄養バランス抜群の素晴らしい献立なんだと心から感心します。
一年を通して、その時の旬を毎日楽しめるようその方のために献立を組み立て、想像を絶する手間をかけながら準備をして、目の前で最高の状態に調理してお出しする。常に真っ向勝負のお料理しか出さない在り方。だからこそ、安心して美味しくいただくことが出来ます。
選りすぐりの逸品
重よしさんのお料理は、甲乙は本当につけ難い絶品揃いなので、選ぶのは至難の業。
ご主人曰く、全て食べ終わったら時に、どれかが特別に印象に残るのではなく、「あぁ、美味しかった、いい食事だった」と言ってもらえるのが理想だと。
しかしながら、やっぱり、これは本当にまた食べたいし、何度も食べたいと言いたくなる逸品があります。これまでいただいた中で、特に印象深く、お薦めしたいものをいくつかご紹介します。
・すっぽんのスープ
初めて伺った時にいただきました。ご主人にこれ何のスープだと思う? と聞かれハズレたんですが、まさかすっぽんとは。キノコかなと思うほど香りが芳醇で、全く臭みはなく、味はコクと深みが凄いけどまろやか、体や内臓に浸透していくような存在感。絶品というのはこのスープのためにあると思えるほど感動しました。ここまで全く濁りのない澄んだやさしい状態にするには、どれだけの手間がかかっているか…. 凄いとしか言いようがないです。
・鯛のお刺身
こちらのお魚は日本で最高のものしか扱われないので、お刺身は本当に素晴らしいです。
こちらでいただいた数々のお料理の中でも、特に印象深いものが、鯛の美味しさ。
初めてこちらで鯛のお刺身をいただいた時に、知っている鯛とは別格の違いで、鯛ってこんなに美味しいの?! と驚きました。甘みが強くて弾力があるのに柔らかく香りが高い、北灘の鯛と教えていただきました。その後も、明石、鳴門、青森、宇和島など、色々な場所の鯛を食べさせていただきましたが、目利きの鯛は、いつも最高の状態でもてなされます。
・長良川の鮎の塩焼き
重よしさんに伺うと、長良川、鮎、鵜飼、すぎ山旅館、というワードが何度となく飛び交います。鮎についてほとんど知識がなかったわたしは、こちらで鮎の基本的なことについて知ることが出来ました。すぎ山旅館さんは、ご主人が絶大なる信頼を寄せていらっしゃる長良川の鵜匠さんです。ゴールデンウィーク明けから川開きが始まり、少しずつ届き始め、7月8月9月は、多くの顧客さんが鵜がとった鮎を食べに来店されます。
繊維が細かくふっくらした身は香りも絶品で、皮とワタの苦味とのコントラストが鮎らしく夏の到来を感じます。鮎の塩焼きは、大人の食べ物として憧れますね。添えられた蓼酢も好きで、ちょと舐めては日本酒のあてにしています。
・甘鯛のフライ
香りの良いサクサクの衣は極薄く、身がぎっしり。甘鯛をほおばるように食べる贅沢な逸品。
・栗しか入ってない栗コロッケ
栗をこして固めてそのまま揚げた栗のコロッケ。丹波の栗の香り高さと甘みが自然のまま活かされています。ここの蟹コロッケも毛蟹の身だけをほぐしてかためて揚げたもので、蟹しか入っていません。笑
・毎回楽しみしている椀
重よしさんのメインとも言いたい椀が、毎回美味しすぎるんです。
冬の蕪蒸しは、絶品すぎる葛とわさびでほんとうに美味しい。体も心も温まります。
大胆に賀茂茄子の半身を素揚げし、お出汁で煮浸し。茄子のトロッとした食感、少し甘みを感じる出汁に浸かってさらに自然な甘みが疲れた体にやさしい。
丁寧にすってこしてを繰り返して、きめ細かく滑らかにした大豆とその旨みで柔らかく煮られた夏野菜の旨みを堪能する呉汁。大好きな一品です。
・大好きな和エチュべ
エチュべが大好きなので、この和エチュべが出てきた時はテンションが上がりました。そして、想像以上の美味しさに感動しました。
・いろいろ選べる〆のご飯
〆のお食事は、色々と選択肢があります。その日の材料にもよりますが、鉄火丼、かき揚げ丼、天丼、ネギ丼、雑炊、しじみのおじや、稲庭うどん、そうめん、にゅうめん、おにぎり、ご飯、お味噌汁、お漬物。ほんと悩みますね〜
まずお米が本当に美味しいお米(魚沼の厳選米) なので、ご飯ものは全部美味しいです。
こちらのおにぎりの大ファンでよく頼みます。具は梅と何か。鮭、ちりめん山椒、おかか、昆布などから2種選んで、最高の海苔に巻いていただきます。もう、最高に美味しくて、たまに追加でお持ち帰りもさせていただきます。
・デザートも素晴らしい
柑橘系フルーツのゼリーは、もうふるふるのやわらかい果汁そのままのゼリーは、夏場の定番のデザート。他には、紅玉、パッションフルーツ、苺なども素晴らしいです。
各地の名物菓子などいろいろいただけるので勉強になります。
あんこや栗なども、あくまでも素材の特徴を自然な形で甘さ控えめ。美味しいんです。
これからも進化し続ける
和食は本当に大好きなので、他の和食屋さんにも行きます。ただ、他に行くたびに、重よしさんはやはり別格だなと思ってしまいます。
決して派手な装飾はなく、美味しい素材を手間を惜しまず最大限美味しく活かし、それに似合う器でもてなす。だから、何を食べてもかなり美味しい。年に何度も行けるわけではないですが、必ず行くようにplanを立てます。特に自分を整えたい時に。またはご褒美として。
このお店を出されて50年。ご主人は、いつも、これ作ってみたけどいかがですか?どう思いますか? と、お客様に聞き取りもしながら、これをやってみよう、寒い日はこうしたらどうかな、これはイマひとつだなと、好奇心と探究心で常に新たな美味しさを生もうと熱心です。
また、その日の献立を決めていても、そのお客様の体調や、気温、状況に応じて、その場で変更もされます。それって中々出来ないですよね。凄いことだと思います。だから、いつ行っても美味しいと感じ、感動するんだと思います。進化し続ける努力をされていらっしゃるから。
これからも、重よしさんに伺えるように頑張ろうと思います。
出会うことができて心から良かったと感謝しています。
お読みいただきありがとうございました。
この国の宝、料理界の匠
2023年3月末、最も惜しむべき、お一人の料理の神匠が逝去されました。
原宿『 重よし 』 店主 佐藤憲三氏 享年78歳
1967年に名古屋にある『重よし』で5年間修行され、1972年、佐藤氏が27歳の[…]
右腕お弟子さんによる再出発
師匠が逝去され、その2ヶ月後、6月1日、右腕であるお弟子さん3名によって再出発された。
再出発の前日、ご縁をいただき伺い、お弟子さんによる新たな献立をいただきました。
少し緊張の赴きの中、いつも通り、淡[…]
*重よしさんの本「 重よしの呼吸 」には、ご主人の料理に対する思いとレシピが隠すことなく記述されています。ご主人の料理に対する誠実な考えを学び、改めて尊敬の思いです。家庭でも作れるよう分かりやすく説明されています。
店舗情報
重よし : Tel: 03-3400-4044
東京都渋谷区神宮前6-35-3 コープオリンピア 1F / 日曜休
営業時間 : 12:00 – 13:30 / 17:30 – 22:00